もっとも活躍した、もっとも旧式な戦艦
戦艦金剛


 
       排水量26,330t 全長214.6m 全幅28m 吃水8.1m        出力64,000hp 速力27.5kt 航続距離14kt/8,000浬        兵装 45口径36p連装主砲4基8門 50口径15p単装副砲16門        40口径7.5p単装砲12門 53p魚雷発射管8門 乗員1,221名        同型艦 比叡 榛名 霧島     20世紀にはいると日本でも国産の戦艦が建造できるようになった。だが、イギリスでドレ    ッドノートが竣工したのを機に建艦競争が激化すると国産に乗り出したばかりの日本ではそれ    に対抗していくことが困難になってしまった。そこで日本は再び外国に新型戦艦の建造を依頼    して技術の吸収を図った。     日本が発注したのは超ド級巡洋戦艦で、建造は以前に戦艦香取を造ったことがあるイギリス    ビッカース社で行われた。     金剛の基本設計は当時最新鋭だったイギリスのライオン級巡洋戦艦を参考にされたが、ライ    オン級の主砲がイギリス海軍の標準であった34p砲ではなく当時世界最大の36p砲が搭載    されたり、その主砲配置もライオン級が艦首に2基、艦中央部に1基、艦尾に1基が配置され    ていたのに対し、金剛は艦首と艦尾に2基ずつ配置された。これで金剛は艦尾に4門の主砲が    向けられるようになった。この主砲配置はイギリスでも有効と認められ、ライオン級の4番艦    として建造されるはずだったタイガーを金剛に準じた設計に変更して竣工させている。     金剛は1913年8月16日に竣工したが、同艦は外国で建造された最後の戦艦となった。    2番艦以降はすべて国内で建造されている。竣工した金剛級4隻は世界最強の巡洋戦艦部隊と    して知られ、第1次世界大戦ではドイツ海軍に手を焼いたイギリス海軍から貸与の要請が来た    ことがあった。
       排水量29,320t 全長214.6m 全幅30.9m 吃水8.41m        出力75,600hp 速力25kt 航続距離18kt/9,500浬        兵装 45口径36p連装主砲4基8門 45口径15p単装副砲16門        40口径12.7p連装高角砲4基8門 7.7o単装機銃3挺        魚雷発射管4門 航空機搭載3機 乗員1,065名     ワシントン軍縮条約で戦艦の新規建造が禁止されると日本海軍は既存の戦艦の改装に着手し    た。最初に改装されることになったのは一番古い金剛級であった。     金剛の改装工事が始まったのは1929年10月20日で姉妹艦では最も遅かった。改装は    主に防御力の強化に重点が置かれた。金剛は完成当時、水準以上の防御力を誇っていたがそれ    は超ド級巡洋戦艦としてであり、旧式化してくると新造の戦艦と戦うのには非常に不安があっ    た。しかも、金剛のモデルとなったライオン級の巡洋戦艦がジュットラント海戦でドイツ海軍    の砲撃で一撃で撃沈されており、遠距離からの砲撃に対する水平防御力の強化する必要があっ    た。     そこで36pの砲弾が20,000〜25,000mの距離から命中しても耐えられるだけ    の装甲が施されることとなり、弾薬庫や機関室部分の中甲板に64〜102o、主砲部分の中    甲板と砲塔上部に76oの装甲が追加された。さらに建造時にはまったく考慮されてなかった    水中からの攻撃に対する防御策として弾薬庫と機関室部分の外側に76o〜100oの装甲が    施すと共に舷側にバルジが設けられ雷撃に対してもある程度まで耐えられるようになった。     防御力の強化だけでなく、主砲の仰角が25度から33度に引き上げられ射程が28,00    0mまで増大するなどの攻撃力の強化や機関も旧式の缶をすべて新式に取り替えて航続距離を    延長させている。     ただし、装甲の強化によって重量が増したため速力が低下してしまった。そのため、金剛級    は類別を巡洋戦艦から戦艦に変更されてしまい日本海軍から巡洋戦艦という艦種は消滅してし    まった。
       排水量31,720t 全長222m 全幅31.02m 吃水9.6m        出力136,000hp 速力30.3kt 航続距離18kt/10,000浬        兵装 45口径36p連装主砲4基8門 45口径15p単装副砲14門        40口径12.7p連装高角砲4基8門 25o連装機銃10基20挺        航空機搭載3機 乗員不明     ワシントン条約からの脱退が決定的になると日本海軍は条約に縛られない自由な設定で戦艦    の建造や既存艦の改装ができるようになった。金剛も高速戦艦として改装されることになった。     速力を上げるには当然の事だが機関出力の向上が不可欠となる。第2次改装で金剛は機関が    すべて重油専燃焼缶に換装され出力が増大し、それに加え艦の抵抗を減らすため艦尾を7.6    m延長したことで30ktの高速が発揮できるようになった。     また主砲も最大仰角が43度に高めることにより最大射程が30,000m以上に引き上げ    られ、副砲も仰角が30度にまで高められた。対空火力も強化されている。     太平洋戦争が勃発すると金剛は陸軍の南方作戦の支援任務に就き、ガダルカナル攻防戦では    姉妹艦の榛名と共にヘンダーソン飛行場を砲撃して甚大な損害を与えるなど大戦に参加した戦    艦では最も古参でありながらその高速性能で活躍した。はっきり言って日本戦艦で存在意義が    あったのはこの金剛級だけであった。     金剛は1944年11月21日に台湾海峡で米潜シーライオンの雷撃で沈没した。太平洋戦    争で潜水艦に撃沈された戦艦はこの金剛だけである。     開戦前、金剛級戦艦を夜戦部隊に配備する計画があった。夜戦部隊の任務は主力艦同士の決    戦の前に敵戦艦の数を少しでも減らすことであるが、その主役である水雷戦隊が敵艦を攻撃す    るにはそれを護衛している敵の水雷戦隊を撃破しなければならない。味方の水雷戦隊が仕事し    やすいように支援するのが重巡部隊だが、日本海軍の重巡はアメリカの重巡よりも質量共に劣    っていた。つまり、敵を減らすどころか逆にこっちが撃滅される可能性が高いのだ。     そこで、金剛級戦艦を夜戦部隊に配備しようということになったのだ。旧式で装甲も薄い金    剛級戦艦だが、それは戦艦を相手にした場合に欠陥になることで重巡洋艦を相手にする分には    まったく問題はなかった。実際に金剛級戦艦が夜戦部隊に参加していたらアメリカの巡洋艦・    駆逐艦部隊は苦戦を強いられていただろう。     アメリカ海軍も金剛級戦艦に脅威を感じていたようで、それに対抗するため現実に建造され    た戦艦では最も高速であるアイオワ級を建造している。アイオワ級は日本の新鋭戦艦である大    和に対抗するために建造されたのだが、同時に巡洋艦キラーである金剛級戦艦に対抗するため    にも建造されたのだ。なぜならアイオワ級の前に建造されたノースカロライナ級とサウスダコ    タ級は攻撃力と防御力は金剛級戦艦を上回るものの速力が低いため捕捉するのが難しかったか    らだ。それに比べアイオワ級は速力でも金剛級を圧倒している。もし、金剛とアイオワが交戦    したとしたら金剛は逃げることもできずに撃沈されるだろう。
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